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  • 2016.05.03 Tuesday
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評価:
森 瑤子
KADOKAWA/角川書店
¥ 821
(2014-06-20)
Amazonランキング: 20621位

【内容紹介】

スコットランド・デボン地方に4人きょうだいの長女として生まれ育ったリタ。病弱でこもりがちだった少女時代を経て、第一次世界大戦で初恋の人を失い、失意の底にいた彼女は、日本人で初めてモルトウイスキーの製造法を学びにやってきた竹鶴政孝と運命的に出逢う。極東の日本で政孝の生涯を献身的に支え続けたリタの心のよりどころとは―。ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝と、妻リタの人生をモデルに描いた感動の長篇伝記小説
(「BOOK」データベースより)


夏になると書店に並ぶ、文庫リーフレットを今年もいただいてきました。
毎年、新潮社・角川書店・集英社のリーフレットをいただいてくるのですが、集めているわけではありません。それでも、たまに本棚から以前のものが見つかると、「集めておけばよかったなぁ」という気になります。
今年は、新潮文庫のYonda?パンダちゃんがいなくなっていたので少し淋しく思います。

「望郷」は今年の角川文庫のリーフレットで見つけました。
日本のウイスキーの祖・竹鶴政孝の妻リタの物語。
物語は20世紀初頭のスコットランドに春が訪れる朝、リタの寝室から始まります。
リタは17歳。二人の妹と末の弟、優しい両親に囲まれて暮らしている中にも、どこか淋しい、心細い、不安な思いを抱えている日々。病気がちだった少女時代から大人になっていく過程は、読みごたえ抜群です。
大人になるということ。両親との会話は、愛情がたっぷりと溢れていて、私たちの生活の中にも必要な言葉を見つけることができると思います。

この物語の中に、
「男が命を懸ける場所は戦場ではない」
といった信念が描かれています。リタはこの言葉に心動かされます。
二つの大戦を祖国と日本で生きた女性。
これまでの「竹鶴リタ」のイメージは、「夫の夢を陰で支えた、スコットランドから来た大和撫子」といった感じでしたが、ここに描かれているリタは少し違います。
よく「日本人より日本人らしい」などと書かれていますが、この小説のリタはそんなことありません。ただ、その時代をそのように生きた女性、それだけです。このように描くのは、筆者が人間(特に女性)というものをしっかりと見つめ、分析し、上手く捉えることができているからではないかと思います。
そう、リタは良妻賢母でもなんでもありません。ただ、竹鶴政孝の支えとなり、ともに夢を歩んだことは事実でしょう。

物語の前半は、ゆったりとしていて、英国女流作家の翻訳小説のような雰囲気。後半になるとガラっと空気感が変わります。
日本のじっとりとした湿気を含んだような文章。夏の強い日差し、冬のからっ風をも感じ取ることができます。
こちらの小説、一時期絶版になっていたようで、この6月に再版されたものです。
どうやら秋から、NHK朝の連続テレビドラマ小説で扱われるようです。
事実は小説よりも奇なり。
彼女の人生は、脚色する必要もなく波乱万丈であったので、あまりドラマドラマしないでもらいたいけれど、それは難しいでしょうね。(きっと竹鶴の母は素晴らしい人間のように描かれるんだと思います)

戦争の混乱期、日本には誇るべきウイスキーの作り手がいて、彼を支えた女性がいたということを知っていただけると、酒呑みとしては嬉しく思います。
余市の蒸留所には、是非行ってみたいです。
 
JUGEMテーマ:最近読んだ本

評価:
桐野 夏生
新潮社
¥ 580
(2010-04-24)
Amazonランキング: 985位
Amazonおすすめ度:

 清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ争われ、清子は女王の悦びに震える―。東京島と名づけられた小宇宙に産み落とされた、新たな創世紀。谷崎潤一郎賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)



映画も話題になっている「東京島」の原作小説。
アナタハン島事件をモデルに書かれた創作で、谷崎潤一郎賞も受賞しているということからもう少しリアルでグロテスクな内容が描かれているのかと思ったが、主人公・清子の行動や、「東京島」の住民の発狂の様子など、ほとんどコメディ。

物語は無人島に漂着した5年ほど後から始まっており、既に「女王」というような存在感はない。
映画では木村多恵が演じているので、美人なのかと思いきやそうでもない。いや、むしろこの無人島「東京島」で一番太っている「白い豚」である。
「東京島」の住民たちは、「オダイバ」「シブヤ」「チョーフ」など自分たちで勝手に名前をつけ、好きなところに気の合った者と住んでいる。
もはや脱出を試みることもなく、救出されることも半分諦めているトウキョウの者たちとは違い、ホンコン(後に漂着した中国人たち)は生活能力に長け、精力的であった。
清子は、トウキョウを裏切り、ホンコンたちと島を脱出しようとするが海流で島へ押し流されてしまう。
そこから、夫・隆の日誌を軸に東京島での過去・現在の出来事が描かれているのである。

結末は、賛否両論あるようだが、個人的には「アリ」だと思う。
ものすごいエネルギー溢れた作品であり、読後感はなんともいえないものが残る。
また、途中、清子のご都合主義や島民のバカバカしさに、ふっと笑いがこぼれることもあると思う。
興味がある方は読んで見られたらどうか。
ただし、万人に薦められる作品ではないことは明言しておく。

評価:
乙一
集英社
¥ 440
(2000-05-19)
Amazonランキング: 5504位
Amazonおすすめ度:

あの夏、私は殺された。 

9歳の夏休み、わたしは仲良しの弥生ちゃんに木の上から突き落とされて死んだ。その死体を隠そうとする兄妹の悪夢のような日々。のどかな田園地帯に起きた事件を、死体のわたしが語る驚愕の新感覚ホラー。早熟な才能、乙一のデビュー作



著者が16歳で執筆したデビュー作。
タイトルからして一風変わった印象を与えるが、設定も面白い。
何を隠そう主人公は死体なのだ。それも冒頭で友達に殺された「私」の死体。
これは斬新である。

今年のナツイチにあったので、なんとなく手にとってみた作品。
16歳の頃の作品ということもあり、あまり期待はせずに読み始めたのだが、意外に面白く一気に読んでしまった。
小学生の兄弟が死体を隠す、という現実には起こりえなそうな内容で、隠す⇒見つかりそうになる⇒移動させまた隠すの繰り返しなのだが、描写が上手いので先が気になり、頁を繰る手が止まらない。
少し昔の、所謂「日本の田舎」が舞台で、実際そのようなところに住んでいたことがなくても情景が思い浮かび、物語全体に漂う生暖かい不気味な雰囲気はとても高校生によって書かれたものとは思えない。
ナツイチ選出ということもあり、中高生の夏休みの読書向きの一冊。


同時収録されている「優子」も短編ながら読み応えのある作品。
目新しいストーリーではないが、狂気と錯覚の渦巻く小さなホラー小説。
幽霊や怨霊よりも恐ろしいものが人間に宿っていることを改めて感じた。

集英社 ナツイチ*2010*

評価:
唯川 恵
集英社
¥ 470
(1995-06-20)
Amazonランキング: 58661位
Amazonおすすめ度:

 まるで「さよなら」をするために恋をするような…ちょっとせつなくて、心に痛い五つのラブ・ストーリー。―約束の時間から一時間。彼はきっと来ない、来るわけがない。恋はいつしか壊れていくもの―終わった恋にエンド・マークを打つために勇気をふるって、一歩を踏みだした女の子たち。そして、それは新しい恋の始まり…五つの恋が壊れていくありさまを描く恋愛小説集。
(「BOOK」データベースより)



筆者あとがきに、

私はこの本を、どこかひねくれていて、疑い深く、臆病で、自意識が強く、自己分析が好きで、ささやかなプライドにいつも縛られ、男の人の前で女らしく振る舞うことに抵抗があり、たまに褒められると怒った顔をしてしまい、お喋りが過ぎた夜は自己嫌悪で眠れなくなり、さよならを言われてすがることも出来ずそれでいて諦めることも出来ず、もう恋なんて二度とごめんと言いながらやっぱりまた恋をしてしまう、そんな女性たちに捧げます。

とあります。
知人が読んでいて興味を持ち、上の一文で迷わず手に取った作品。
そう、私は、「どこかひねくれていて、疑い深く、臆病で、自意識が強く、自己分析が好きで、ささやかなプライドにいつも縛られ、男の人の前で女らしく振る舞うことに抵抗があり、たまに褒められると怒った顔をしてしまい、お喋りが過ぎた夜は自己嫌悪で眠れなくなり、さよならを言われてすがることも出来ずそれでいて諦めることも出来ず、もう恋なんて二度とごめんと言いながらやっぱりまた恋をしてしまう、そんな女性」なのです。

タイトルからもわかるように、「さよなら」をテーマにした5つの恋愛短編集。
だいぶ前に書かれた作品なので、現代の感覚とは合わない箇所があるかもしれませんが、人の感情は変わりません。

恋はふたりの意志で始まる。(中略)けれど、終わりの意志は片方でいい。どちらかが終わったと思った時に、恋はすでに終わっている。
(「さよならの向こう側」より抜粋)


短編なので、移動時間などにさらりと読めます。
さよならをするのに、そんなに時間はいらないということかもしれません。
この本に出てくる主人公たちは、少し垢抜けない印象です。女の子は綺麗になって然るべきだと思うので、最後のお話が良かったです。
そして、主人公の周りの友人たちがキラキラしていて、彼女たちから元気がもらえます。
私ももっと精力的に動きたい!そのように思わせてくれる作品。

雨の日の読書に、どうぞ。

評価:
阿川 佐和子,沢村 凜,三浦 しをん,柴田 よしき,乃南 アサ,谷村 志穂,角田 光代,松尾 由美
新潮社
¥ 540
(2008-11-27)
Amazonランキング: 64788位
Amazonおすすめ度:


もはや、少年少女が出会うような、初々しい恋じゃない。変わらない恋心なんてない、そんなのとっくに知っている。だけど…。大人になっても「こんなの初めて」ってあったんだ。すれ違いや別れをくり返してきた彼らだけが知る、「最初で最後」のかけがえのない瞬間たち。8人の作家が描き出す、経験してきたすべての恋を肯定したくなる珠玉のアンソロジー。最後の恋、それはつまり、自分史上最高の恋。
(「BOOK」データベースより)



阿川佐和子、角田光代、沢村凛、柴田よしき、三浦しをん、谷村志穂、乃南アサ、松尾由美 8人の女性作家による恋愛アンソロジー。

「最後の恋」がテーマとなっているが、「最後」というキーワードをどうとらえるのか。
最後というからには終わるのか、それとも「最後の恋」が始まるのか、「恋」は終わって別のものに変わっていくのか・・・。

印象的なシーンはそれぞれのお話にあるのだが、最も心に残ったというか初めて受けた感覚だったのが、阿川佐和子さんの「海辺食堂の姉妹」。
ああいった描写は女性にしかできないだろうし、かといって嫌らしくなく淡々と進んでいく空気感がとても新鮮だった。


短編なので、移動時間やちょっとくつろいだ時間に読むのがおすすめ。
じんわりと効いてきます。

評価:
辻 仁成
集英社
¥ 560
(2004-05)
Amazonランキング: 67650位
Amazonおすすめ度:

 ★★★☆☆  75点


恋人との穏やかな日常に、突然生じた疑惑。彼女は自分を裏切り、あの男と愛しあっているのではないだろうか?身を苛む嫉妬。崩壊して行く関係。それでもなお彼女の放つ香りは理性を奪い、「私」を虜にする。そして、白い花の香りをまとったもうひとりの女―。欲望?それとも愛なのか?「香り」を通奏低音に、愛についての張りつめた問いが続く、狂おしく、ピュアな恋愛小説。

(「BOOK」データベースより)



恋人への疑念、不確かな憶測に翻弄され嫉妬する主人公。
あの男―尊敬する同窓の先輩―政野英二、その妻政野早希、私の恋人ミノリと私。
均衡が崩れ、4人の歪んだ感情の空間を香りと音楽を交えながら絶妙に描いている。
主人公「私」目線で展開されるため、相手の心理が読めずに、自然と読者も探りながら読まなければならないのも面白い。


各節ごとにキーになる文章が挿入されており、それらが考えるきっかけを与えてくれる。

誤解と勘違いについて。
物事をうっかり間違って思い込んでしまうことからはじまる愛がある。一方意味を取り違えたり、間違った解釈をすることではじまる愛もある。どちらも偶然が深く関与しよく似ているように思えるが、本質で少し異なる。しかし人間はこの二つの作用によって、いつも人生を左右されてしまう、愛や恋を失うのもまたこの二人の妖精の悪戯による場合が多い。



愛と嫉妬はつねに危険な関係にある。嫉妬のない愛などあるのだろうか。人間は嫉妬する動物である。どんな聖人君子も嫉妬をする。子供から老人までみんな嫉妬する生き物なのである。


大人の女が膝を出すとき、男は用心しなければならない。熟した女が、普段隠しているものを見せようとする時、そこには既に大人の駆け引きが生まれている。駆け引きのできない十代の少女のあからさまなひざ小僧とは違い、そこには弁えた(わきまえた)熟女のプライドの高いエロスが横たわっている。



ぐっと心を掴む言葉を紡ぎ出すことに関して、これほど力を持った作家をあまり知らない。
単純に心に響く言葉。
多くの人がこれらの言葉の前に足をとめるだろうから、敢えて今回は割愛させていただくが。
※但し、何度も同じ表現を使う癖があるので(この作品で言えば、「ここではないどこか」等)、この作品については★★★☆☆(75点)と少し低めで(笑)

心理だけでなく、情景や空間、温度の描写がとても良い。
個人的に好きなシーンは、富良野へ行く場面だが、地に足が着いていないようなふわふわした期待感と薄っすらとした不安のようなものが感じられて、読んでいるこちらまでそわそわしてくる。

嫉妬という感情は最も醜いとよく言われるが、いったいどういうところから湧き出てくるものなのだろうか。
自分に対する自信のなさという人もいれば、孤独に対する恐怖という人、羨望と取る人もいる。
また、嫉妬の対象はどこなのか。
この作品は、「嫉妬」という題材を描いていながら、後味悪くなくさらりと読めてしまう。
これもこの作家の持ち味ではないだろうか。

評価:
絲山 秋子
文藝春秋
¥ 480
(2009-02)
Amazonランキング: 7404位
Amazonおすすめ度:

 『勤労感謝の日』、『沖で待つ』、『みなみのしまのぶんたろう』の3つの短編が収録されています。
どれもドライな小説ですが、何か芯が残るような読後感。
表題作『沖で待つ』は、配属先である福岡の街が描かれていて、年代で言えば私の知らない街なのですが、うっすら懐かしい思いすら感じます。
それから、『勤労感謝の日』と『沖で待つ』、巻末の解説はどこか似たような空気が流れているように思います。登場人物の行為は、必ずしもそうとは言えませんが、読者はこの2つの小説の中に確かにリアルを感じるでしょう。


●勤労感謝の日

職安に通う30代半ばから後半に差し掛かっている「無職」の主人公の視点で描かれた短編。
近所のお世話になっているおばさんからお見合いを勧められ、簡単なお見合い(?)をするのだが、その相手というのが自称「仕事大好き人間」・・・!
「無職にも選択の自由がある」と主張しながらも、独身のまま実家に生活費も入れずパラサイトしている状態を心苦しく思っている主人公は、口が悪く、キレやすく、酒飲みで後先考えないところがあるが、とても人間的で憎めない。
後輩の水谷との会話は実際にされているもののようにリアルで、もしかしたら自分と重ねて読む人も少なくないかもしれない。
水谷の言っていたお蚕の話が印象的だった。


●沖で待つ

第134回芥川賞受賞。
仕事を通して結ばれた、恋愛には発展しない男女の信頼と友情を描いた作品。
・・・なんて説明されてもキレイゴトにしか聞こえないが(少なくとも私には)、会社勤めのある人には少なからず理解できる人間関係だと思う。
家族や恋人にも言えない秘密を、打ち明けたり共有したりするのではなくて、それを抹消する。お互いどちらかが死んだときにパソコンのHDDを破壊するという約束をして、同期の太っちゃんは死んだ。
太っちゃんの部屋に忍び込む場面は、妙な緊張感で描かれている。
太っちゃんの秘密は、あの大学ノートだけだったとは思えないのだけど、その辺りもわからないからこの小説は面白いのだと思う。


●みなみのしまのぶんたろう

全文、ひらがなとカタカナのみで書かれている「一見子供向け」のファンタジー小説。
しいはらぶんたろうという、文学に精通し、ヨットに乗ってもチャンピオン、政界でも活躍し大臣にまでなった男が、総理大臣のお弁当を無断で食べてしまったことから電気研究の無人島に流されてしまうお話。
気難しいぶんたろうだが、子供向け風の文体で、クスっと笑えるユーモアをまじえながら可愛らしく描かれている。

評価:
川上 弘美
新潮社
¥ 460
(2006-07)
Amazonランキング: 160025位
Amazonおすすめ度:

 内容(「BOOK」データベースより)

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ…。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。



++++++


どーーーしようもないマダオ(※るでメな)【ニシノユキヒコ】。
西野幸彦は男前で清潔、穏やかで、とても丁寧だし優しいから女の子からものすごくモテる。
けれど、必ず最後には女の子の方から去って行ってしまう(と西野幸彦は思っている)。
そんな西野くんは、
「どうして僕はひとをきちんと愛せないんだろう」
なんて真剣に悩んでいる。


「ねぇ、どうして、この世界は、こんなにもとめどがないの」
「とめどがなくて、僕はいたたまれない」

西野幸彦は本当に面白い。
西野幸彦はかわいい。

一億円あったら、知ってる女の子たちをみんな幸せにしてあげられるだろうか。。

そして、途方も無くしょうもない。



ニシノユキヒコは切ない。
それは、彼の背景(そうやって納得させているのか、それとも物語の便宜上必要だったのかはわからない)とは関係なく。
ニシノユキヒコは真剣、だから切ない。
矛盾だらけだけど、それは真実であるようにも思う。

この小説は、西野幸彦という一人の女たらしを中心に据え、彼と関係のあった女性の視点から描かれている。
女性たちはどこか似ていて、恐らくそれが西野幸彦の好みなのだろう。

西野幸彦は過去において暗い淵を持っているが、それゆえ人を愛せないわけではないのだという。
過去は彼を形づくる一つの要素であるけれど、それが直接の要因になっているのではない。
彼はいつもひょうひょうとしていて、「なめらかな上の空」である。
懲りることを知らず、何度も同じ過ちをおかす。本人は別に構わないのだろうけど。
女性たちは、みなニシノユキヒコのダメなところを知っている。
そこがこの小説の魅力じゃないかな。
そして、最大の魅力は、ニシノユキヒコそのものであるけど。


評価:
伊坂 幸太郎
祥伝社
¥ 660
(2006-02)
Amazonランキング: 1459位
Amazonおすすめ度:

陽気なギャングが地球を回す



出版社 / 著者からの内容紹介
嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ! 奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス!


 

私は観ていないのですが、同名のタイトルで映画もあったようで。
キャストがなんかすごいな・・・(笑)


成瀬・・・大沢たかお
雪子・・・鈴木京香
響野・・・佐藤浩市
久遠・・・松田翔太


原作を読んで、それぞれのキャラクターはしっかりしてるのに、どうしても響野のイメージが湧かなかったのですが、佐藤浩市!なるほどー!!
久遠も、犬っぽいならちょっとイメージ違うかな・・・と思っていたけれど、意外とハマってるんじゃないかと思います。




タイトルからわかるとおり、4人組の銀行強盗が主人公のお話。
銀行強盗といっても至って平和主義。
彼らの仕事は、決して向こう見ずな犯行というものではなく、綿密な計画を練って無駄なく鮮やかである。
「シェパード」「スピッツ」「柴犬」などの伊坂幸太郎ならではのレトリックもよい。
じゃあ、どんなお話なの!?
って、それは読んでのお楽しみ。と言いたいところですが、それじゃ紹介にならないので、あらすじを少し。


4人の悪党はいつものように響野の喫茶店で仕事の打ち合わせをし、4000万円を手に入れるが、帰路で噂の現金輸送車ジャックに売上を横取りされてしまう。
4人の出会いも織り交ぜつつ、4000万円の奪還を計画するが・・・。






といったところでしょうか。
ネタバレしない程度に説明すると。

伊坂作品は、全体のストーリーよりも、一つひとつのシーンがとても緻密で、丁寧に書かれていると思います。
なので、読んでいる途中で飽きがこない。
よく、「会話が面白い」などと言われていますが、私には具体的にどこが面白い、とは言えないんですよね。
というのも、面白くないわけではなくて、すべてがスムーズなので、ひとつの会話を説明しようとすると、前後どころか話の初めから説明しなくちゃいけなくなる。
もちろん私の力量不足なのですが(笑)
だから、伊坂ファンも伊坂作品をまだ読んだことがない人も、是非読んでいただきたい。
基本的にベースは勧善懲悪なので読みやすいです。






評価:
伊坂 幸太郎,石田 衣良,市川 拓司,中田 永一,中村 航,本多 孝好
祥伝社
¥ 630
(2007-09-01)
Amazonランキング: 720位
Amazonおすすめ度:

●祥伝社創立35周年記念特別出版●

愛してる、って言葉だけじゃ足りない(オール書下ろし)
恋愛には物語がある。
初めて異性を意識しはじめたとき、相手とのあいだに微妙な距離感を感じたとき、初恋の同級生との再会を果たしたとき、そして別れを予感したとき…。
さまざまな断片から生まれるストーリーを、現在もっとも注目を集める男性作家たちが紡ぐ、至高の恋愛アンソロジー


■収録作品


「透明ポーラーベア」 伊坂幸太郎

「魔法のボタン」 石田衣良

「卒業写真」 市川拓司

「百瀬、こっちを向いて」 中田永一

「突き抜けろ」 中村航

「Sidewalk Talk」 本多孝好





6人の男性作家による恋愛短編集。
メジャーですが、執筆されている伊坂幸太郎さんと石田衣良さんが好きなので、「なんとも贅沢な!」と本屋で目に留まるなり購入した一冊。
表紙も可愛らしく、とても6人の男性の手によるものとは・・・失礼!
しかし、世の男性というものはなんともロマンティストなんですね。
少しだけ、つんと切ない恋の物語ばかりです。



●透明ポーラーベア(伊坂幸太郎)


主人公は、つきあって2年の彼女と動物園に来ている。
そこで行方不明の姉の最後の元カレと再会するが。。


バラバラに散らばっているモチーフが一本の糸で繋がっていて、その糸を引くと、吊るし上げられるように一つひとつのモチーフが浮き上がってくる。伊坂さんの作品にはそんなイメージがあります。
今作も最後に繋がってくるのですが、「かもしれない」という感じで、それがよかった。
【繋がっている】ということが、ミステリ小説の単なるトリックとしてではなく、ひとの暖かさを感じられる作品です。
伊坂さんの恋愛小説ということで、一体どんなものなのだろう・・・?と思っていたのですが、やはりそんなにラブラブしたものではなかったです(笑)
それでも充分楽しめます!
主人公が「わかった」というところが良かったです。


●魔法のボタン(石田衣良)


失恋したばかりの主人公と幼馴染の萌枝。
恋の始まりはこんな感じだったな・・・とほんわりする作品です。


読み始めは、なんてありきたりな・・・!と思っていたのですが、知らず知らずのうちにぐいぐい引き込まれます。
とにかく私は萌枝に惹かれてしまって、どんな女の子なんだろう。。と、どんどん読み進めていったら、「あ、終わっちゃった」という感じで。
まったく劇的なわけではなく、でもそこがリアルであったりするのだけど、本当に等身大の小説でした。(実際、大人になっても幼馴染と遊ぶなんて稀なのかもしれませんが)
萌枝の心情なんて書いていないんですが、なんかわかる。
女の子ってこうだよね。って。
25歳、という設定だったけれど、もっと大人の設定でもよかったかな。


卒業写真(市川拓司)


コーヒーショップで、中学校の同級生と再会する。
会話の中で、思い違いと懐かしさとときめきが起こるお話。


これは・・・、どきどきしました。
初めは主人公の女の子の思考が少し鬱陶しくて、感情移入できないと思っていたけれど、読み進めていくうちに私までどきどきしてしまいました(笑)
ただ、昔の同級生とお茶を飲むシーンだけなんですが。
長い間会っていない同級生は、初対面の人よりも緊張するような気がします。
私は中・高女子高育ちなので、残念ながらこのような経験をすることはできませんが、もし、自分だったら・・・、たぶん「だれ?」なんて聞けないですね(笑)
動きがない小説なのに、意外なパンチがありました。


百瀬、こっちを向いて(中田永一)


「人間レベル2」の僕。
このお話が今回一番読み応えがあったかな。
2008年5月、同名のタイトルの単行本『百瀬、こっちを向いて。』を出版。
満を持して単行本デビュー。なのだけれども、
どんな方なのか調べてみたら、どうやら覆面作家さんのようで。。
ある著名作家さんが、中田永一というペンネームで書かれているとかなんとか。
乙一さんと同一人物という噂が有力のようですが、個人的にはどなたが書かれていようと良い作品だと思うので、真偽にはあまり興味はありません。
ただ、著者名が 「乙一」 となっているのと 「中田永一」 となっているのでは、受ける印象が違いますね。
おすすめです。


突き抜けろ(中村 航)


★★★☆☆

なんというか、印象にあまり残らなかった。
けれど、読み心地のよい作品でした。
主人公と彼女はつきあうルールを決めていて、例えば、電話は交替でかける とか、電話は月・水・金の決まった時間、会うのは週末、週末のデートは金曜に電話をかけた方が決める とか。
時間が空いた主人公は、友人の坂本と一緒に、坂本の先輩である木戸さんの家に行って鍋をする。
木戸さんの言うことは無茶苦茶なことばかりだが、「説得力がある」と言っているのがよくわからなかった。
私は、木戸さんのこと、結構好きだけれど、思うに、読者と作品の間に見えない壁があるのだと思う。
そして、木戸さんのイメージは寺島進なのだが、どなたか賛同してくれる方〜??
※木戸さんも主人公も大学生なんだけどね(笑)


Sidewalk Talk(本多孝好)


これも★★★☆☆

離婚を目前にした夫婦の最後の食事。
既に別居していて、レストランの前での待ち合わせ。

このアンソロジーの中でも人気のあるお話のようです。
何編か他の方が書かれたレビューを読ませていただいたところによると。
確かに切ない。
けれど、ちょっと卑屈すぎてよくわからなかった。
というのは、離婚を決めた理由と結婚を決めた理由。
男性の方の理由はなんとなくわかりました。
でも結婚も離婚もひとりではできないもの。
彼女は、なぜ離婚しようと思ったのか。
そして、主人公のどういったところに惹かれて、結婚を決めたのか。

また、嗅覚と記憶の関係。
確かに香りはことば以上に記憶を呼び起こす力があると思います。
けれど、一回だけの香り自体をそんなに覚えているのでしょうか?
例えば、以前よくつけていた香水やヘアワックスなどのにおいは、何年かして嗅ぐと大変懐かしい思いがします。
それは、その頃の出来事が香りと一緒に記憶されているからじゃないのかな。
それと、その香りを嗅ぐ機会は最後までとっておかなくても、彼女が待ち合わせ場所に現れたとき、彼女をエスコートしてレストランに入るとき、レストルームからテーブルに帰ってきたとき など、何度かあったように思うのです。

とはいえ、切ない、けれど愛のある小説です。
私が一番気に入っているのは、タイトル。
少し、歩かない?というところで、この小説は終わっているのです。
つまり、Sidewalk Talkは描かれていない。
けれど、今まで隣を歩いてきたこともSidewalk Talkなんでしょうね。


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