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  • 2016.05.03 Tuesday
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評価:
太宰 治
角川書店
¥ 300
(2009-05)
Amazonランキング: 30274位
Amazonおすすめ度:

前エントリーで書ききれなかったので(笑)

「人間失格」は太宰の遺書的作品であるが、その最後の作品ではない。
筆も軽快で、道化でしか人と接することのできない自分を自嘲しているかと思えば、自分のことがかわいくてしょうがないのだろうと読み取れたりもする。それが太宰である。
太宰文学が好きな人間は、もちろん太宰の中に自分と似た部分を見出しているのだろうが、同様に太宰を嫌う人間もその中に自分とよく似た部分を見つけてしまうのだろう。
あるいは、太宰が嫌いな人の方がより太宰に似ているのかもしれない。


してその翌日(あくるひ)も同じ事を繰返して、
昨日に異(かわ)らぬ慣例(しきたり)に従えばよい。
即ち荒っぽい大きな歓楽(よろこび)を避(よ)けてさえいれば、
自然また大きな悲哀(かなしみ)もやって来ないのだ。
ゆくてを塞ぐ邪魔な石を
蟾蜍(ひきがえる)は廻って通る

 上田敏訳のギイ・シャルル・クロオとかいうひとの、こんな詩句を見つけた時、自分はひとりで顔を燃えるくらいに赤くしました。
 蟾蜍。
(それが、自分だ。世間がゆるすも、ゆるさぬもない。葬むるも、葬むらぬもない。自分は、犬よりも猫よりも劣等な動物なのだ。蟾蜍。のそのそ動いているだけだ)
 自分の飲酒は、次第に量がふえて来ました。高円寺駅附近だけでなく、新宿、銀座のほうにまで出かけて飲み、外泊する事さえあり、ただもう「慣例(しきたり)」に従わぬよう、バアで無頼漢の振りをしたり、片端からキスしたり、つまり、また、あの情死以前の、いや、あの頃よりさらにすさ荒んで野卑な酒飲みになり、金に窮して、シヅ子の衣類を持ち出すほどになりました。


演技を見抜かれることを恐れていた葉蔵は、上田敏訳のギイ・シャルル・クロオの詩にもこのように怯えている。ここで引用された詩句は第二連のみであるが、第三連以降は葉蔵の行動とは相容れず、ここにも彼の性質が伺えて面白い。葉蔵の「慣例(しきたり)」の破り方は丸っきり甘えであり、それが太宰本人と重なるのである。


しかし、君、もし本当に生きていたいなら、
その日その日に新しい力を出して、
荒れ狂う生(いのち)、鼻息強く跳ね踊る生(いのち)、
御せられまいとする生(いのち)にうち克たねばならぬ。
一刻も息(やす)む間の無い奇蹟を行ってこそ
乱れそそげたこの鬣(たてがみ)
汗ばみ跳(はず)むこの脇腹、
湯気を立てたるこの鼻頭(はなづら)は自由に出来る。
君よ、君の生(いのち)は愛の一念であれ、
心残りの錆(さび)も無く、
後悔の錆(さび)も無く、
鋼鉄の清い光に輝け。


この詩のタイトルは『世間のある人人には......』。
「世間とは個人じゃないか」という思想めいたものを持ち始めていた葉蔵が出会った「個人」以外の世間である。


世間。どうやら自分にも、それがぼんやりわかりかけて来たような気がしていました。個人と個人の争いで、しかも、その場の争いで、しかも、その場で勝てばいいのだ、人間は決して人間に服従しない、奴隷でさえ奴隷らしい卑屈なシッペがえしをするものだ、だから、人間にはその場の一本勝負にたよる他、生き伸びる工夫がつかぬのだ、大義名分らしいものを称(とな)えていながら、努力の目標は必ず個人、個人を乗り越えてまた個人、世間の難解は、個人の難解、大洋(オーシャン)は世間でなくて、個人なのだ、と世の中という大海の幻影におびえる事から、多少解放せられて、以前ほど、あれこれと際限の無い心遣いする事なく、謂わば差し当っての必要に応じて、いくぶん図々しく振舞う事を覚えて来たのです。


自分から敢えて幸福を遠ざけていく生き方は滑稽なようにも映るが、意外と多くの人間が持ち合わせているのではないだろうか。自己犠牲を払うことで恍惚たる自己満足を得るのと同時に。自分が今まさに不幸の深淵を覗きこんでいるような。落ちると理性ではわかっているものの、足を踏み外さずにはいられないような。そのような心理が、この「人間失格」全体に漂っているように思う。
太宰治とは、プライドの高い人間だったのだろうか。
どこまで落ちても、まだ本気ではない。ダメな部類の人間であると思う。


……あなたを見ると、たいていの女のひとは、何かしてあげたくて、たまらなくなる。……いつも、おどおどしていて、それでいて、滑稽家なんだもの。……時たま、ひとりで、ひどく沈んでいるけれども、そのさまが、いっそう女のひとの心を、かゆがらせる。


シヅ子の台詞である。
ダメな男に惚れるのは、昔からダメな女である。
恐らく。


三島由紀夫は太宰本人に面と向かって言った。
「僕は太宰さんの文学は嫌いなんです」


再度問う。
あなたは太宰が好きですか?



  • 2016.05.03 Tuesday
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  • 16:51
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